私、絶対に自らの人生に関わって欲しくないと思っている言葉があります。
それは「還暦」です。全く納得できないけれど、私、今年、還暦を迎えてしまいました。「老人」というレッテルを貼られた気分です。
今年に入ってからやたらと「ライフプランナー」と称する人から電話がかかってきたり、 「これからの人生にとって大切な保険のご案内」とかいう郵便物がいろいろ来たり、 運用する資産もないのに「資産運用のご案内」があったりと、何か今までと違う。その手のことはからきし苦手なので、「還暦って、何て鬱陶しいんだろう?」と心から思っています。
そもそも私が、そんな言葉があるかどうか知らないけど、還暦アレルギーになったのは、100%シェフ金子が原因だと思っています。
発端は、私に何の相談もなく「俺の還暦祝い」と言って、車を買い替えたこと。そして「還暦とほぼ同時期に、キャンプという人生最高の趣味に出逢った」とか、私にとってはどうでもいい趣味を持って、次々にキャンプ道具を増やして家の中を圧迫していること。
「これから、モノを少なくしてスッキリ生きていこう」と清らかに考えている私と、正反対の方向を向いているではありませんか!
何かにつけ「そんなの無茶だよ、俺、還暦だぜ!」とすぐ還暦を持ち出してくるし、無理したこともないくせに「還暦過ぎたから、無理は禁物だな」とか言ってるし、本当に鬱陶しいったらありません。還暦なんて、できればなくなってもらいたい位です。
しかしながらどういうわけか、今年は還暦のお祝いでサン ル スーにいらっしゃるお客様がことのほか多いのです。ある日などは、同じ空間に還暦祝いのお客様が4組もいらして「一体、サン ル スーはどうなってるんだ?」と混乱してしまいました。
あるお客様は、奥様が還暦を迎えられてご予約をいただいたのですが、事前にご主人が、奥様にサプライズで60本の真っ赤な薔薇をサン ル スーにお持ちになりました。「うわー、圧巻! なんて素敵なプレゼントなんだろう!」と感動したものの、「しかし、一体、いくらしたんだろう?」と夢のないことを考えてしまい、余りにもちっぽけな自分を反省いたしました。
ある男性のお客様は、「1964」と大きくプリントされたTシャツを着てお越しになり、「張り切ってるなあ、そんなに嬉しいんですか? お客様!」と、自分との落差を感じたのですが、よく考えてみれば、私が不本意にも60歳になった日の夜、スーシェフ香田たちスタッフが、赤い帽子とちゃんちゃんこと、私のお気に入りのビールをプレゼントしてくれました。その時「なんか、予想外に気分いいものだな」と、図らずも喜ぶ自分がおりました。
サン ル スーのオープン当初から通ってくださっている、あるご家族は、奥様の還暦祝いでサン ル スーへいらしゃいました。3人のお子さん達が、私がもらったものと全く同じ帽子とちゃんちゃんこを持ちこんで来たので、やたらと嬉しくなり、「あ!これ、ネットで買った安いヤツでしょ?」と、もらった分際でありながら、スタッフにもお客様にも失礼なことを言った上に、還暦祝いのご家族の記念撮影に、私も帽子とちゃんちゃんこを身につけ、図々しくも一緒に写ってしまいました。
この帽子とちゃんちゃんこセット、その後も店でもプライベートでも何故かひんぱんに登場し、大活躍しています。完全に元はとった感じです。
つい先日は、女子3人組が皆して赤い衣装でご来店。3人揃って60歳とのこと。ハッキリ言って、熟女3人が赤い服を着て街を歩いていたら、目立つこと請け合いです。「電車の中でもジロジロ見られた」んだそう。お客様、それ、当たり前です。
この女子3人の話は前向きなことばかりで、とにかくとにかく楽しそう!「この人たち、絶対100歳まで生きる」と確信し、「そうか、還暦って、毛嫌いしないで自分に取り込んじゃえばいいんだ!」と、なんだかこっちまでめでたくなってきました。
正直、いまだに「還暦? 冗談じゃない」という気持ちを捨てられないでいるけれど、もう真実は変えられないので、私は誰かさんのように還暦を言い訳に使うのではなく、「還暦でもまだまだ現役」を全うしてみよう。とりあえず「還暦、バンザイ!」
今年のサン ル スーは還暦だらけです。これから還暦を迎えられるお客様、還暦を迎えたけどまだお祝いをしていないお客様、どうぞ、還暦祝いはサン ル スーでいかがでしょうか?
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