私ときたら本当にくどいですね。わかっていますけど、言わせていただきます。値上がりが止まりません!
ワインに至っては、入荷のたびに値段が上がっていたり、すぐに終売になってしまったり、うっかりしていると1本1000円以上も値上げされていたりで、気の抜けない毎日です。今まで2〜3ヶ月に一度更新していたワインリストが、今や新しくしても2週間も保ちません。
ワイン業者さんも苦しんでおられるのは百も承知なので、業者さんに当たり散らすわけにもいかず、ワインに向かって「ふざけるな」と悪態をつく他、術がありません。
未だかつて経験したことのない値上げや、もう今となっては日常化してしまった終売や欠品で、サンルスーの定番メニューも次々と姿を消して、もうずいぶん経ちます。
でもそういう定番ものは根強い人気があって、「○○の復活はまだですか?」「高くてもいいから○○を食べさせて」などと言っていただけること、本当にありがたいです。
値上げに苦しみ始めた頃のこと。我々が「おぼっちゃま」と呼ばせていただいている、齢70歳超えのお客様、自称「超おぼっちゃま」に、懇々と言われました。
「いくら値上がりがひどいからといって、店がそれを被るようなことはやめてくれ。ましてや、値段を上げないために材料の質を落とすのはもっとやめてくれ。でも、サンルスーで食事をするために、うんと頑張った気持ちで来る若い人だっている。その人たちのために、無理のない価格のものも、ちゃんと残しておいてくれ」
……さすが、おぼっちゃま! 誰だって値上げは嫌なもの。自分さえ良ければ……みたいな風潮の昨今に、なんと皆に優しく、あったかいことを言ってくださるんだろう?
そして、私としては意外なことでしたが、「損をしないように、ちゃんと値段を取ってくださいね」このお言葉を、驚くほどたくさんのお客様からいただきました。ありがたくて、できれば抱きつきたいくらいです。私が「サンルスーのお客様はいちばん!」と思い上がってしまう所以です。
でも逆に、そんな言葉をいただくと、性分があまのじゃく故、なんだかひと肌脱ぎたくなってしまうのです。
本当に人聞きの悪い乱暴な言い方になりますが、あえて言わせていただくと「モッテケドロボー!」の気持ちです。もう、やぶれかぶれ! どんなに高い原価率でもなんでも、今まで普通に出していたものを当たり前に出したい。ここ最近はその気持ちが強くなってきました。
姿を消していた定番もの、次々と復活の兆しが見えてまいりました。「オマールエビと野菜のテリーヌ」「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」「牛フィレ肉のロッシーニふう」などなどです。あったりなかったりの「鴨くんサラダ」も落ち着いてきました。そうそう、「桃づくしのプティポ」の季節もやってきました。ご予約時に「キープ」のご指定の多いデザートです。
久々にお目見えの「牛フィレ肉のロッシーニふう」を、「ずっとこれを待ってた!」と喜んでくださるお客様の素敵な笑顔を見たとき、作り出すのは料理人たちなのに「智恵美、いいことした! 間違ってない!」と、すっかり有頂天になってしまいました。やっぱりお客様の喜ぶ顔って、何物にも代え難い。
やぶれかぶれ、モッテケドロボー!の思いで、やっと戻ってきた定番メニュー。とは言いながら、材料の終売、欠品は日常茶飯事。どうぞメニューにあるうちにお召し上がりください。
でも、それでもにっちもさっちももいかなくなったら、ちょっとだけ、値上げさせてくださいね。
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