テイクアウトメニューを始めたとき、前菜盛り合わせの中の一品だった「魚介のグラタン」。インスタグラムやフェイスブック用の写真撮影から投稿まで一切合切を取り仕切る、サンルスーのSNS担当部長・スーシェフ香田が、ある日こう言い出しました。
「魚介のグラタンの評判がとても良いので、メインの一品に昇格させませんか?」
魚介のグラタン担当のシェフ金子の反応をすかさず見ると、思った通り苦笑い。
魚介のグラタンは、ベシャメルソースが命です。「洋食」の部類に入るこのソースは、サンルスーの店内営業で出てきたことはありません。
シェフ金子の40年以上の料理人人生のスタートは、フランス料理だけでなくステーキや洋食も出す大きなレストランでした。そこで厳しいシェフから、ベシャメルソースの全てを徹底的に叩き込まれました。
めったに料理について語ることのないシェフ金子に、ベシャメルソースの作り方についてインタビューを試みたことがありました。曰く、いろいろある作り方の中で、自分に一番しっくりくる作り方で作っているとのこと。
詳しい手順を聞いてみると、まあとにかく手がかかって大変なこと! 面倒臭いことが苦手な私は最後まで聞いていられず、インタビューは途中で中断してしまいました。これでは苦笑いも仕方ないか!
キャンプと車のことしか考えていないと思っていたので「なんだ、ちゃんと仕事してるんだ」と妙に感心したものです。
そして思ったのです。もしかしたら私よりも、店に通い続けてくださるお客様の方が、ずっとシェフ金子の料理の理解者なのかもしれないと。
店の運営や経営には無頓着な、はなはだ困った代表取締役ですが、どんなに忙しくても、いくら体調が悪くても、決して料理の手抜きはしません。手抜きをするくらいだったら絶対に作りません。まあ、それはそれでとても厄介なことではあるのですが。
私も一度、少しグラタンのおこぼれをもらって食べてみました。「うん、旨い!」
店内営業が再開したら、またお客様に役者になっていただいて、この味をなんとかメニューに登場させてもらうことにしましょう!
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