緊急事態宣言がまたもや延長になりそうですが、シェフ金子「体がなまる」と言って、9月からボチボチと仕込みにかかり始めました。
体が重すぎるので、家ごはんはブランチをやめて、前々から朝食のお決まりだったスムージーに戻し、ここのところ早めに店に出かけるシェフ金子。なんだか私の目を盗むように足早に出かけようとするので、今晩何を食べたいのか聞こうと思ったら先に察知され、「聞かねーでくれ!」。
東京に住んでもう40年以上です。それなのに本音が出るときは故郷の福島訛りが出るクセが。仕方ないから夜ごはんのメニューは自分で決めることにしました。
夕食時「今日、店で何食べた?」と聞くと、「メスティンでインスタントラーメンを作った」とシェフ金子。「メスティンでインスタントラーメン? 料理人でしょ?」と思いっきり軽蔑すると、「キャンプに行けないからせめて気分だけでもと思って……」。これじゃ、ブランチをやめた意味がないと思いながら、なんだかかわいそうになってきました。
ところで先日私、最近流行りの「バスチー」、いわゆるバスクチーズケーキなるものを作りました。お酒の肴作りは絶対欠かしませんが、家でお菓子作りをするなんて、店を始めてからおそらく初めてです。
シェフ金子「なんだ、珍しいな。あんた(私です)もやればできるじゃん」。上から目線でなんだか引っかかる言い方です。生地を落ち着かせて翌日食べてみると、謙遜でもなんでもなく、私の理想のバスチーからは程遠く、はっきり言ってイマイチでした。
「いや、大したもんだよ。なんとか食べられるよ」。はるか上の方から言うその言い方、ますます引っかかります。
数日後、営業再開に向けて仕込み中のシェフ金子が、女系一族である私の親族の女子に、グループLINEで「タルト・オ・フロマージュ食べる人〜?」と、食べ手を募っています。私が送ったバスチーの写真にはほぼ無反応だったのに、一斉に「はーい!」と皆で飛びついてきます。
「何がタルト・オ・フロマージュだ。フランス語なんて使っちゃって。それにしても嫌味な男だな」と、かなりカツンカツン来ましたが、冷静になって考えると、うちはフランス料理屋。そしてシェフ金子、フランス料理しかちゃんと作れません。
どうやらタルト・オ・フロマージュ、サンルスーのメニューに本当に久しぶりに復活しそうな気配です。
それにしても、この私に闘いを挑んでくるなんて、100年早い!……と思うのは、おそらくこの世で私だけなのでしょう。
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