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とてつもなくビストロっぽい優等生

明るい話でなくて恐縮ですが、値上げと終売の嵐がいっこうに止まりません。コロナ第7波のおかげで売り上げはこざっぱりしたものなのに、支払いときたら1年で最も売り上げの多い12月並みです。


噂によると、年末から年明けにかけてさらに値上げに拍車がかかるとのこと。もういい加減にしてくれないかなと正直、途方に暮れています。


この尋常ではない値上げと終売、欠品で、サンルスーのメニューの中でも人気の定番が次々と姿を消している状況です。


そんな中、スーシェフ香田が「サンルスーの初期の頃にメニューにあったという〈揚げ卵のサラダ〉が気になって仕方がないんです」と、幻のメニューの再現に乗り出しました。そういえばどういうわけか、前々からこのメニューにこだわっていましたっけ。



実はシェフ金子、卵が大好きです。我が家の朝ごはんは、仕事のある日はスムージー一本槍ですが、休日に「朝ごはん、何食べたい?」と聞くと「メンタマヤキ(目玉焼きのこと)にソーセージ!」と、たいてい答えは同じで、私としては全くやりがいがありません。


納豆には卵を投入しないと「味が決まらない」と文句を言うし、スーシェフ香田がまかないでよく作る〈納豆オムレツ〉の美味しさには、いつも「完璧なバランスだ」と唸っています。


そして何より、ちょっと古い映画『暴力脱獄』(1967年、だいぶ古いですね)で、ポール・ニューマンがゆで卵を50個食べるシーンを見て、幼心に「うわーすごいな」と憧れていたという、なんだか変なヒトです。


そんな卵大好き人間が、20年以上も前に作っていた〈揚げ卵とベーコンのサラダ〉。一度食べると中毒性がある(?)ようで、毎回こればかり前菜に選ぶお客様が何人もいらっしゃいました。


もうここまできたら、「物価の優等生」として名高い卵にご登場いただくしかありません。ちょっと前に〈鴨の砂肝のコンフィ 焼き野菜のサラダ仕立て 揚げ卵添え〉がメニューに加わりました。いろんな焼き野菜の上に鴨の砂肝のコンフィをのせ、油で素揚げした卵をのせて、パルミジャーノチーズを削ってふりかける、シンプルでありながら、オーダーが集中した中で火を使う工程がいくつもあるこのサラダ、なかなか手のかかる一品です。最もシェフ金子らしい料理だと私には思えます。


ご注文が入って、出来上がったこのサラダを見ると、普段はまず飲むことのない、ボージョレかカオールあたりの赤ワインが飲みたくなります。ちなみにシェフ金子は、アルザスのゲヴュルツトラミネールか南仏のロゼ、スーシェフ香田はすっきりとしたソービニヨンブランなんだそう。


「俺にとってこれ、とてつもなくビストロっぽい料理なんだよね」とシェフ金子。そう、我々、どうしようもなく「ビストロ」が大好きなのです。

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